我が家のお姉ちゃんは、小学校3年生の2月からサピックスに通い始めました。最初こそ中間のクラスにいましたが、半年ほどでAクラス(最下位クラス)まで落ちていきました。。
夫の転勤により中学受験を断念することになりましたが、その後もコツコツと勉強を続け、中学校に入学する頃には数学が得意科目になりました。現在は、本人が第一希望だった超難関私立高校に合格し、祖父母の家から元気に通っています。海外に来てからも、サピックスには海外からでもサピックスオープンを受けられるシステムがあるので、偏差値を知ることができました。日本のサピックスでAクラスにいた頃には、マンスリーテストで偏差値30台ということもありました。しかし、コツコツ努力を続けた結果、受験期の中学3年生になる頃には、安定してサピックスオープンで偏差値65以上をキープできるようになりました。
地頭がいいわけではない2人(母と娘)がどうやってそこまで辿り着いたのか?この記事では、親子でコツコツ頑張った勉強の記録をまとめました。
<勉強編>計算力をつける
一桁の足し算、引き算を暗記する
一桁の足し算、その逆の引き算を暗記すると、計算のスピードが上がります。
賢い親御さんには常識のことかと思います。しかし私は知りませんでした。7+8=、、(ちょっと考えて)15ではダメだということを。。。九九だけ覚えておけば大丈夫だと思っていました。
我が家では、計算カードを作成し1+1〜9+9までの81パターンが90秒で言えるようになるまで繰り返しました。その逆の引き算も同じように、90秒で全て言えるようになるまで繰り返しました。
平方数、立方数、分数⇄小数を暗記する
我が家は、平方数/立方数はこのサイトから一覧をコピーしトイレに貼って覚えました。
小数はこのサイトから一覧をコピーしました。
毎日勉強する前に、呪文のように染み込むまで暗唱しました。私も暗記をして、1日の中で何度か不意打ちで問題を出したりもしていました。
百ます計算を毎日やる
この問題集を使いました。毎日100問、慣れてくれば数分で終わります。すごくつまらないけど、実力がつきます。小学生の間は毎日やりました。
計算の工夫を知る
例えば、とても簡単な例ですが、
88.5+76.8+11.5
という問題の場合、88.5 + 11.5 =100 を先に計算してしまえばかなり早く計算ができることになります。こういった簡単なものからかなり難しいものまで、計算の工夫を知っておけば早く解けるようになる問題がたくさんあります。
計算の工夫を知らないと、模試や試験の大問1の計算問題で大幅に時間を取られることになります。
お姉ちゃんはこちらの問題集を続けてここから計算の工夫を学びました。
とにかく毎日計算問題を続ける
暗記すべき内容を暗記しながら、同時に毎日「百ます計算」と「公文のドリル」を継続的に行いました。公文のドリルを終えた後は、「中学入試で出る順の過去問計算」に取り組みました。間違えた問題は、間違いカードに追加して何度も復習しました。
<勉強編>式、図の書き方と問題文の読み方を教える
◇ 式や図の書き方
◇ 問題文の読み方
式や図をかく意味
とにかく楽をしたいお姉ちゃん。省けるものを省こうとします。式を書きなさい、図をかきなさいと言っても全く定着しませんでした。
「だって暗算できるし」「図をかかなくてもわかるし」
というのがお姉ちゃんの言い分です。ここで、昔であれば
「書かないから出来ないのよ!結局間違えてるじゃない!」
という言い方をしていましたが、怒らないと決めた私はこういう言い方に変えました。
「知ってる??模試や入試だと、もし間違っていても、考え方があっていたらそこで点数がもらえることがあるんだよ。自分の考え方を示すためには式や図をかかないと分かってもらえないよ?書いたほうがお得じゃない?」
というアプローチです。もちろんこのアプローチで、すぐに式や図をかくようにはなりませんでしたが、命令されるより遥かに本人の心に響いたようです。
式や図の書き方
一度私が式や図をきれいに書いて見せます。その後、似たような問題で今度は本人に書いてもらいます。ここで私は手伝ったり口出ししないようにしました。
この時に、本人が工夫していたり見やすいところがあれば全力で褒めます。褒めるところがなく、直すところしかない場合には
「書けたね!(←とりあえず書けたことを褒める)ここをこうするともっと見やすく理解しやすくなると思うよ」という言い方で説明します。絶対にダメ出しはしません。
何回も間違える問題は、何回でも(怒らずに)
「こうやって書くと分かりやすいよ」を繰り返します。
そして「今度は自分でかいてみてくれる?」をお願いします。時間がかかっても我慢です。どんなに苦手な問題でも、数十回やるとスラスラとかけて解けるようになります。ここで「私でもできる」という気持ちが芽生えてきました。
問題文の読み方
お姉ちゃんの課題の一つに「問題文が何を言っているのか、何を聞かれているのかわからない」というものがありました。
それを克服するためにやったことが
- 2,3回声に出して問題を読んでみる(たまにこれで分かる時がある)
- わからない時には文章を意味が分かる語句に細かく分けて考える
- 分けた語句の意味を考えながら図や式をかいていく
具体的には、このような感じです。
この問題が分からなかったとします。
Aの分速は85m、Bの分速は69mです。Aは学校を出て公園へ、
Bは公園を出て学校へ同時に出発しました。この2人は学校と公園の真ん中より公園の方へ40mだけ近いところで出会いました。学校から公園までの距離は何mですか?
全部読んで意味が分からなかったとしても「Aの分速は85m」ということは理解できると思います。ここですかさずこのように書いていきます。
「Bの分速は69m」これも理解できます。
「Aは学校を出て公園へ」これも分かります。
「Bは公園を出て学校へ同時に出発しました」これも分かります。
「この2人は学校と公園の真ん中より公園の方へ40mだけ近いところで出会いました。」Aの方が分速が速い(=速く進める)ので、真ん中より40m公園よりに来たところで2人は出会いました。整理するとこうなります。
この絵を本人にかいてもらい、一緒に考えていきます。
Aの方が分速が速いので、Aは真ん中から40m過ぎた場所で、Bは真ん中に40m届かない場所で出会っています。同時に出発しているので、2人が歩いた距離の差は80m(40 + 40 = 80)になります。
2人の分速の差は16m (85 – 69 = 16)なので、1分間に16mの差がつきます。聞かれているのは「学校から公園までの距離は何mですか?」なので、
80 ÷ 16 = 5 (←2人の距離の差÷2人の分速の差 =2人が歩いた時間(5分))
(85 + 69)× 5 = 770 (←2人の分速の合計(2人が1分間に移動できる距離の合計)×歩いた時間(5分)=2人の歩いた距離)
となり、答えは 770mになります。
図を描き、式を書いて一緒に考えて、もし分からなくても大丈夫です。分からない問題はもう一度解くことになります。コツコツ続けていると、1ヶ月前、3ヶ月前に解けなかった問題が急に解けるようになるという現象が少しずつ起こってきます。解ける問題がどんどん増えてくることになります。
<勉強編>図形は可能な限り実物を作成する
折り紙や空き箱で実物を作成する
平面図形でも、立体図形でも、間違えた問題の図形は可能な限り再現して作成しました。折り紙やティッシュの空き箱、お菓子の空き箱が役立ちました。作った図形は捨てずに保管し、同じところを間違えた時に再利用しました。解けるようになった問題の図形のみ捨てていきました。
図形に特化した問題集を2冊完璧にする
基礎トレとBASICだけでは図形の問題が少し足りないと感じていました。そこで、図形に特化したこの問題集2冊を使いました。
この本は、前半がパターン別の問題及び解説になっています。前半が理解できるようになったら後半のカードになっている問題に取り組んでいきます。カードの問題は切り離して、コピーをとって(少し小さいので拡大コピーして)解いていきます。間違えた問題は「間違いカード」に加えてさらに何回も解くようにしました。
<勉強編>サピックスの基礎トレとBASICを活用
基礎トレとBASICの入手方法はヤフオクとメルカリ
サピックス生であれば、テキストとしてもらったり購入することができます。しかし、市販はされていないため、サピックス生以外が書店やアマゾンなどで購入することはできません。引っ越す際に私が利用したのが、ヤフオクとメルカリでした。なるべく書き込みが少ない(できれば書き込みがない)ものを探して、基礎トレは小学4年〜6年のものを全て、BASICは5冊全て入手しました。
基礎トレとBASICの使い方
基礎トレは4年〜6年生分全て合わせると36冊、BASICは5冊あります。我が家はこれを全て6年生の11月までに完璧に理解することを目標に決めました。(12月以降は中学生分野の先取り勉強をさせたかったため)
「全て終わらせる」ことと「全て完璧に理解する」ということは全く違います。完璧に理解するためには何度も繰り返す必要があります。そこで、
- 今やるべき問題
- 1ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前にやった問題
上記をそれぞれ同時並行で今日やる勉強のリストに加えていきます。6ヶ月前にやった問題が間違えずに解けた時点でやっと「できた問題」とカウントします。
次にご紹介する「間違いカード」も繰り返しやっていくため、できない問題は必然的に数十回取り組むことになっていきます。こうすることで、本人が不得意な問題も徐々に定着していきました。
<勉強編>間違えた問題は「間違いカード」を作成
間違えた問題は「間違いカード」を作成して何度も解くようにしました。100円ショップなどでA4の画用紙を購入し、これを3当分に切ります。(コピー用紙では裏の答えが透けてしまうため、画用紙を使いました)間違えた問題をコピーし、画用紙の表に問題を、裏に答えを書いていきます。
問題の方のコピーを取って、やることリストに加えていきます。間違えたら、カード後ろの答えを見て確認をさせます。それでも分からない問題は一緒に解き直しました。
<勉強編>助けてもらった本
親子で勉強していると、解説を見ても私(母親)も理解できないときや、私の説明ではお姉ちゃんが理解できないときがたくさんありました。そんなときに助けてもらった本です。
- カリスマ家庭教師が秘訣を伝授!中学受験「算数」の教え方のコツ
- 下剋上算数攻略本 stage1
- 下剋上算数攻略本 stage2
- 下剋上算数攻略本 stage3
- 下剋上算数攻略本 stage4
- 下剋上算数難関校受験編
他にもお世話になった本はありますが、こちらには本当に助けていただきました。
「カリスマ家庭教師〜」の著者である安浪さんは、塾講師や家庭教師として長年のご経験から、「算数ができない子がどこでつまずくのか」を熟知されています。その豊富な経験をもとに、中学受験算数の本を多数出版されています。
「下剋上シリーズ」の著者である桜井さんは、中卒という経歴にも関わらず、お嬢様と共に難関中学を目指し受験勉強を経験されました。算数が苦手だった桜井さんが、自ら学び、理解することで算数の魅力に気づき、分かりやすく解説されています。
<勉強以外編>間違えても怒らない
私が気をつけていたことは次の二つでした。
- 同じところを何回間違えても絶対に怒らない
- 怒る時は「やる気がない」ときだけ。でも怒るのではなく淡々と伝える
サピックスの偏差値がどんどん下がっていくにつれて、私が娘に怒鳴り散らす時間が増えていきました。。今思えば本当にかわいそうなことをしたなと思います。。
引っ越しでサピックスや中学受験から離れたものの、優秀な同級生があれだけがんばっている中で「最下位クラスにいたお姉ちゃんがこのまま勉強をやめてしまって大丈夫だろうか?(いや、大丈夫なわけがない。。)」という不安にかられました。そこで、
- 本人のペースで勉強をするということだけに集中
- 分からないことはとことん付き合う
- 同じところで何度間違えても(怒らないで)冷静に説明する
ということを繰り返していくうちに(難しい問題は50回以上繰り返しました)「あれ?この問題前もやったね??分かるかも!」(←10回目ぐらいでやったことがあることに気が付く)という現象が少しずつ、起こってきました。
何度間違えても怒ることはありませんでしたが、やる気がない時には怒りました。と言っても以前のように鬼の形相で泣くまで追い込むようなことはせずに、
「お母さんは間違えても分かるまでお手伝いできるけど、やる気がない子の勉強に付き合う時間はないよ」「せっかくここまでがんばってきたんだから、今やめたらもったいないよ。ここでがんばったら将来の自分が、諦めないでがんばってくれてありがとうって言ってくれるよ。」
と淡々と伝え続けました。
本人も、サピックスに通ったおかげで日本にいた優秀な同級生のレベルを知っていました。ここで諦めたらもう二度と彼らに追いつくことはできないと考えていたようです。やる気がない時も私と一緒に勉強することはやめませんでした。
<勉強以外編>スケジュールを決めて勉強に付き合う
ゴールを決める
お姉ちゃんの場合、塾を再開するのは中1からと決めていました。そこで、
「中学1年生になって塾に行き始めた時にスムーズに塾の授業についていけるようにする」
というゴールを設定しました。その為に必要だと思ったことは以下3点です。
- 計算を完璧にする
- サピックス基礎トレ、BASIC を完璧にする
- 図形の問題を完璧にする
上記3つの具体的な勉強方法は既に<勉強編>1〜4で記載済みですが、この3つを完璧にしたことにより、中学生になってから塾での勉強が本当に楽になりました。
スケジュールを作り、週単位で細かく見直す
最終的なゴール(やるべきこと)から逆算し、月単位、週単位までスケジュールを落とし込みます。
この時、「週1日ぐらい勉強ができない日があっても大丈夫」ぐらいのゆるさでスケジュールをエクセルシートで作ります。達成したらチェックマークをつけていきます。スケジュールは週単位で細かく見直し、もう少しできそうだと思えばペースをあげ、時間が足りなそうであれば、スピードを落とします。遅れが出てきた時には、夏休みや冬休みなどの長期休みで修正しました。
その日にやる勉強を一式揃え机に並べておく
我が家にはかなり大きなコピー機があります。
問題集は全て直接書き込みをせずにコピーを取って使用しました。繰り返し解く必要があるため書き込みがあると邪魔になるからです。その日にやるべき問題のコピーを全てとり、科目ごとにクリアホルダーに入れてきれいに並べます。一番上にはエクセルで作成したスケジュールを置いておきます。
母親が丸つけをし、翌日一緒に確認する
丸つけはそれほど時間はかかりませんが、大変だったことは「間違えたところをどう分かりやすく教えるか考える」ことでした。小学校高学年になってくると問題も難しくなってくるため、私でもすぐには分からない問題もたくさんありました。
幸いなことに、今はインターネットやYouTubeがあるのでそれを駆使して自分(母親)が頭の整理をし、翌日の娘との確認に備えます。私も分からないときには「助けてもらった本」にお世話になりました。
解き方が分からない時に私がよくやっていた方法は
- 問題をそのままGoogle検索する
- YouTubeにキーワードを入れて検索する
という方法です。Google検索で全く同じ問題が出てくることもあれば、似たような問題が出てくることもありました。また、YouTubeでは例えば「小学生 図形 断面図」のような感じでキーワードを入れると解説動画にたどり着けることもありました。途中から、私もだんだん算数の勉強が楽しくなってきました。
※ちなみに、最近話題のchat gpt ですが、文字の羅列だけだったり、解答が間違えていることがあったりするので現時点(2023年3月)ではあまり当てにならないようです。
「間違いカード」を作成し繰り返し解く
<勉強編>5 でも書きましたが、間違えた問題はカードを作成し、それをコピーをとって何回も何十回も繰り返し解いていきます。
ホルダーは次のように分けました。(ホルダーはDAISOで買いました)
- 間違える問題
- できるようになってきた問題
- 完璧に正解できた問題
1〜3のカードを毎日の勉強に計画的に追加していきます。(例えば、それぞれ3問ずつ計9問解く、というような感じで)
「3. 完璧に正解できた問題」をしばらく寝かせてから(1ヶ月ほど)再度解かせてみて正解できればそのカードは外していくというやり方です。このやり方で、理解がかなり深まりました。(写真はほんの一部です)
<勉強以外編>きれいな字を書くために書写教室に通う
字がきれいに書けるようになって良かったことが3つあります。
- 計算ミスが格段に減った
- テストの際の転記ミスが減った
- 本人に自信が持てることが一つ増えた
それまでは、字が汚いだけでなく、筆算をすると数字がどんどんずれていき、もはやどの桁の数字を足したか分からない状態になることもありました。。自分が書いた数字を読み間違えることもしばしば。。それが、字が上手になったことで見やすく桁をそろえて書けるようになりました。計算ミスもグッと減りました。
自分で書いた文字が読めずに転記ミスをすることも多々ありました。答えが合っているのに転記ミスでバツになることも。。そのミスもグッと減りました。
先生のご好意や、実家の母の助けもあり、海外に来てからも書写を続けることができました。高校入学時に、書写教室はやめてしまいましたが、今では私よりもきれいな字を書いています。字がきれいだと褒めていただけることもあり、本人の自信につながっているようです。
<勉強以外編>中学受験はやめて高校受験に切り替える
ひょっとすると、お姉ちゃんが算数・数学が得意になった一番の理由が「中学受験をやめたこと」かもしれません。
我が家の場合、夫の転勤ということで結果的に中学受験をやめることになりました。でも、もしあのまま転勤がなかったとしても絶対にやめていたほうが良かったと思います。
あの頃の状態は、本人の能力が1しかないのに、100のことを無理やりやらせているようなものでした。例えると、自転車しか持っていないのに、今日中に東京から北海道まで行ってこいと言っているような感じです。優秀なお友達は自家用ジェットを持っている。。そのぐらい能力の差がありました。
一度中学受験を始めてしまうと、成績が下がっても親子で変なプライドがありなかなかやめることができませんでした。我が家は集合住宅に住んでおり、同級生で同じ塾に通うお友達が何人かいたため、その子たちの手前なかなか受験をやめるという選択肢が浮かびませんでした。
塾から離れ、順位やクラスなど関係なく、本人のペースで何度も基礎を勉強できたからこそ、中学生になる頃にはものすごい実力をつけることができました。
さらに優秀なお子さんたちは中学受験でごっそり抜けていきます。地味にコツコツ頑張ってきた子にやっとスポットライトが当たるようになります。公立中学に行けば学費も安くすみます。
そんな挫折と暗い記憶しかない中学受験でしたが、経験してみてよかったなと思うことが1つだけがあります。
それは「同じ歳の同級生で、ここまで優秀でここまで頑張っているお友達がたくさんいる。」ということを知れたことです。
お姉ちゃんも「あの優秀な同級生に追いつくためには」という気持ちをいつも心に持っているようです。